魂のヤンバル

11月10日
 だいぶ季節外れだが、どうせ海に入るわけでもなし、ほかに観光客が少ないのはよいことだろう。ということで、沖縄はヤンバルに照準を当てて行ってきた。自分のを持っていく時間と金のゆとりがないのでバイクはレンタルだ。
 夕方那覇空港着。事前にタウンページで「バイクショップ那覇」というレンタル屋を見つけ、予約をいれておいた。 ここで借りられるのは原付〜400ccまで、種類も数も多くない小さな店だ。借りる時も返す時も傷の状態などまったくチェックしない。このテキトウさがよいぞ。たいしたのなかったけど、ヘルメットも貸し出し無料だ。でも事故ったら修理代+3〜5万円らしい。わしは250ccのグラストラッカーを借りた。 出掛けに「沖縄の道路は滑りやすいので気をつけてくれ」と注意を受けたが、確かに何度かヒヤッとしたことがあった。みんなも沖縄を走るときは気をつけよう。

11月11日
象のオリとグラトラ  走りの初日だ。借り物のグラトラは軽く小さくほとんど原チャ気分だ。滑りやすいって云うからどうせそんなに飛ばせないし、狭い沖縄これで十分。でもたいして走らぬうちにケツが痛くなってきたのにはまいった。やっぱりBMWのシートって良くできてると実感した。 目標はヤンバルの森だが、今日はもったいつけて本島北部に行くまでの道のりを楽しむことにする。
写真は米軍基地の“象のオリ”とグラトラ。
読谷の砂浜
まずはせっかく沖縄に着たんだから海だ、ということで読谷までいったところで海岸に出てみた。やっぱり沖縄の海は綺麗だ。でも人は誰もいない。夏なら人だらけだろうに。この時期、砂浜に人は来ないらしい。
読谷の岩場 こちらも同じ読谷だが岩場の方。潮がひていたので海に出てみた。たくさんの洞穴が海に向かって口をあけていた。けっこう深いのもある。干潮じゃなきゃ入れなかったろう。

 次に辺野古にいく。海上に新しい米軍基地が造られようとしている場所だ。基地建設反対の座り込みの人たちがたくさんいた。バイクから降りると、おばちゃんがやってきてわしに基地反対の趣旨を説明始めた。やっと釈放かと思ったらこんどは爺さんがきて同じことを話し始めた。そのうち大勢の中学生が来て見学して話を聞いていた。けっこう盛り上がっているようだ。
今帰仁城
今帰仁城だ。けっこう規模の大きいグスクらしいけど、見学するのに金を取るのがいまいちだ。 それにしても沖縄のグスクを見るたびにラピュタを思い起こしてしまうのはわしだけだろうか。
そしてこの日は名護の西海岸にテントを張り就寝。

11月12日
 朝っぱら少々雨が降ったが、すぐ止んだ。 まずは西海岸沿いの国道58号線を北上し、辺戸岬を目指すことにする。しかし雨降り後の沖縄の道は 確かによく滑ったぞ。
辺戸岬  辺戸岬到着。これまで見てきた沖縄の海と違い、荒々しい迫力がある。 ここには祖国復帰闘争記念碑があった。本土復帰できてよかったよかったという内容かと思ったらぜんぜん違った。 戦時中は本土決戦への捨石とされ、戦後アメリカに占領され、本土復帰後も米軍に支配されていることへの怒りと闘う決意が掘り込まれていて、こちらも海に負けないくらい迫力がある。
 辺戸岬からこんどは東海岸沿いの道を南下する。 とちゅうで2号県道に入ってみた。ヤンバルの原生林を横断し東西の海岸を結ぶ道だ。森の中をしばらく走っていると、 大国林道入り口の看板が目に入った。こちらは原生林を南北に縦断する、総延長35kmの林道ということである。
大国林道 実を言うと、今回は林道には入るまいと思っていた。バイク借り物だし、 ヤンバルクイナ轢いちゃったらやだし、ハブが出てきたらもっとやだし。でもあると入ってみたくなるのが人情というもの(自己中心?)。 とりあえず入ってみてやばそうだったらすぐに出てこようと思ってちょっと入る。 でもこれが思ったより走りやすい。全面舗装のうえ車がまったく走ってない、まさに貸しきり道路だ。 景色もなかなかだったし、調子に乗って終点の福地ダムまで走りきってしまった。
 でも、自分で走りまわっておいて云うのもナンだが、せっかくの原生林に林道造りすぎじゃねえか? 森の中に網の目のように全面舗装の道が造られていて、しかも至る所待避所と称し道が広がっている。 いったい誰のため?なんのため?って首をかしげたくなる。

11月13日
 昨日は走ってばっかりだったので、今日はポイントを絞って歩くことにする。
マングローブ 慶佐次湾のヒルギ林。本島最大のマングローブ林だということだ。しかし天然記念物に指定されてしまったためか、りっぱな遊歩道が整備された観光地だ。贅沢かもしれないがなんとなくおもしろくない。 以前、西表でカヌーに乗ってマングローブ林の中を廻ったことがあったが、あんときは感動したっけな。
玉辻山  玉辻山に登る。ぜんぜん高い山ではないが、頂上から360°見渡せる貴重な山らしい。 しばらく獣道のような一本道を登り、最後はロープのついた急坂だ。 こんなところこんな時期に登るヤツなんかいないのか、だれとも会わなかった。
タナガーグムイ タナガーグムイの植物群落。滝つぼである。タナガーとは手長エビのことで、エビのいる淀みって意味らしい。 滝つぼにつく為にはかなりの急ながけをロープを使って降りていかなければならない。ジャングルの中の滝つぼといった感じ。夏には泳げるらしい。 大きな木からターザンのようなロープがぶら下がっている。これで滝つぼに飛び込むんだろう。 ちなみに滝の水は冷たいと思い込んでいたが、さわるとなんだか生ぬるい。さすがは沖縄の滝だ。
 この日はさわやかな秋晴れで、気持ちよく走れた。東村付近の、荒野の中の一本道をのんびり走っているときがとても気持ちよかった。車もほとんど通らず、なんとも平和でのどかな感じだ。 でも本当はこの道の両側は米軍の演習場になってる。ちょっと道を外れたそこには、のどかとは正反対の世界が広がっているのだろう。
 そののち安波の共同売店で、今回初めてライダーと会った。京都からフェリーで愛車BAJAを持ってきていた。1週間ほど滞在するらしい。
 さて、その日は那覇で一泊2000円の安宿だ。宿について荷物を下ろし、 バイクも無事に返した。そして夜は沖縄の友達と会うことになっている。それまで一休みだ。
古酒庵 友達の“ゆり”。わしがダイビングやってたころの友達だ。 ちなみに強烈な晴女である。いちど猛烈雨男の隊長と勝負させてみたい。
彼女に最近できたばかりの古酒庵という店に連れて行ってもらった。一杯目はオリオンビールで乾杯。 そのあとは泡盛をつがれるままに呑んでしまった。料理も沖縄尽くし。

最終日
 だるい、昨日は飲みすぎたな。飛行機は11時50分だから今日は帰るだけだ。目が覚めてもベッドから動く気もなく、9時30分のチェックアウトで追い出されるように宿を出た。そのとたん「おはようさん」と、よいタイミングでゆりがやってきた。ということで、最終日は期せずしてドライブになった。
 まず奥武島に向かう。本島と橋でつながった小さな島だ。島に入ってすぐの店で天ぷらを買った。この店は有名らしく行列ができてた。そいつを海辺の木蔭に座って食べる。青い空ときれいな海と気持ちのよい風、そして美味い天ぷら。こりゃ最高だ。いつまでものんびりしていたくなる。
 そうしている間にも帰る時間はどんどん迫る。次は沖縄そばだ。島を出たのがすでに10時45分くらい、看板によると空港まで20kmほどだ。もう空港に直行しなきゃいけないんじゃないか? でも「充分間に合う、ぜひともそばを食べさせたい」と云われちゃ逆らえない。なにしろゆりはしょっちゅう飛行機に乗っている飛行機のプロ(?) なのだ。そばを食っている間もわしは時間が気になってしかたなかったが、ゆりが平然としているので自分がひどく神経質なヤツに思えてしまう。結局そば屋を11時15分くらいに出て、那覇空港に着いたのが11時29分だった。ぎりぎりセーフだが、はたしてこれは計算通りだったのか? ちょいと疑問だが、楽しかったのでこれでよかったのだ!

文章 おさる
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