「魂のGATHERING」

日時:平成16年5月15〜16日
場所:山梨県 ほったらかし温泉、パインウッドキャンプ場

PROLOGUE
 まったく、メールというのは便利なものだ。お互いの都合のよい時間に連絡し合えて、しかもいっぺんに全員と連絡が取れる。数年前、伊豆の山の中で「おいこららむちどこいるんだ!」なんてやっていたのがまるではるか遠い過去のようだ。俺たちのような生活時間が合わない連中にはまさに神器と呼ぶにふさわしい道具だ。 今回のGATHERINGにあたっては、場所選定にだいぶ苦労した。あちこちネットで探していたら山梨に「ほったらかし温泉」なる温泉がありそこの駐車場の一部がキャンプ場になっているらしいという情報をつかんだ。後にこのキャンプ場は閉鎖してしまっていることが判明したが、近くに妖しげなキャンプ場を見つけとにかく行こうということになった。なにはともあれ走って、焚き火して、酒が飲めればどこだって天国だ。

第一章 「捕獲」
5月15日
 というわけで、久しぶりの走りだ。俺とエビはつるんで現地へ、ラム地位は前日からツーリングをする予定だったらしいが、今日から別のところを走って現地集合することとなった。みきおは仕事があるらしいが、その仕事が半日で終わるのか夜までかかるのかはメールを見る限り何も分からない、まあいつものことだ。GSのバッテリーの調子が悪そうなことが書いてあったがだからどうなのかは書いていなかった、まあいつものことだ。 9時にエビと岩槻インターで待ち合わせ。定刻どおりにエビ到着、さすがだ。待っている間となりに新車のハーレーがいていちゃいちゃしている。彼らが出発し、俺たちも10分後くらいに出発。すると、一般道合流のところで彼女が事故っていた、おいおいいきなりかよ。しかもかなり重傷っぽい、彼氏は横で茫然としていた。やっぱ事故は怖いよね。このことがあってTACHYは後日、HIT−AIRのエアバッグベストを購入することになる。
 距離的には一番近い我が隊は俺が中〜高学生時代に自転車で峠登りに狂っていた頃のルートである奥武蔵グリーンラインを通って現地に向かうことにする。この道はいくつかの峠を越えていくため適度なアップダウンがあるため、かつては坂馬鹿の聖地といわれたこともある。一般的にはあまりメジャーではないので楽しめそうだ。
 小鹿野あたりから顔振峠に入る。この峠はその昔、源義経が逃亡中、あまりの急坂のため何度も振り返って見たという伝説からこの名前が着いたらしい。とにかく自転車だとかなりつらい坂だったが、バイクだと当然ながら全然平気だ。でもガキの頃、足をつかないで頂上まで登りきることに情熱を傾けていた場所に20数年ぶり再来するのは感慨ひとしおだ。
 久しぶりにきた峠でびっくりしたのは、山登りのかっこした中年どもがやたらいることだった。ヒマなのか、こいつら。おまけに中腹には喫茶店までありやがる。自転車もレーサーではなくMTBばかりだ。まあ俺が高校生のときはMTBなんてなかったが。
 いくつかの峠を越え狩場坂峠で休憩する。ここは当時とあまり変わっていない。ここからは下りだけなので景色を見たり、次々と通り過ぎていくバイクや自転車を見ながらぼんやりしていた。10分も過ぎただろうか、一台のBMWが坂の反対側から登ってきた「おっ、ビーエムじゃん。ラム地位と同じ奴だな。」なんてエビと話していると・・・。なんかパニアも同じだな。ヘルメットも同じみたいだ・・・。えっ?マジ?ラム地位?でもラム地位今日ここ走るなんて言ってなかったぞ!俺とエビはパニックになりながらも必死に手を振って呼びかけた。しかし、奴はこちらのことなど知らぬげに通り過ぎてしまった。エビが緊急発進する。
 数分後、無事にエビに捕獲されたラム地位が頂上に戻ってきた。どうやらGPSにしたがって行き当たりばったりで林道を走ってきたらしい。すごい確率だ。10分違っていたら確実にすれ違っていたのに。やはり魂は呼び合っているのだろうか。



第二章
 捕獲されるちょいと前、さるは埼玉の山中で道に迷っていた。GPS付けてて何やってんだといわれるかもしれないが、道に迷うとウキウキしてくる性分である。それに信号機のない道を進みたかっただけだ。紙の地図とGPSを交互に眺めながら、なんとなしに狩場坂峠に照準を合わせ、走り始めた。たっちいとエビが待ち構えていることも知らずに・・・。
 さて、3人になり狩場坂峠を出発する。だが待て!そっちはわしが今走ってきた方向だぞ!おさるは叫んだがたっちいとエビは「こっちが近道じゃあ〜」と云わんばかりに進んでいく。結局おさるは定峰峠まで来た道を引き返すことになった。まあ、峠道を2倍楽しんだということで許してやろう。
 さて、秩父の街中までとりあえず降りてきた3人、昼飯に通り沿いにあったガストに入った。みんなしてトンカツを注文する。エビはカツ丼希望だがなかったのでカツ煮の単品とライスを頼んで無理やりカツ丼にしていた。食いながらこれからのコースを相談する。当初雁坂トンネルをくぐっていこうとしていたが、まだ日も早い。今からいったらあっという間についてしまうだろう。そこで中津川林道を通り、三国峠を越えていくコースを走ることにした。
 店を出発し、しばらくは国道140号を走る。進むにつれ景色が田舎になっていくのがうれしい。途中大滝でループ橋を通った。まさに空中に造られているかのようだ。高いところは大好きだけど怖がりのおさるはちょっとビビッて走った。そして中津川渓谷を過ぎるといよいよダートに突入する。しかし流石はチャレンジャーズの隊長。普通はそんなんで来るか?と云われそうなRSでガンガン進んでいく。さるの650GSにとっては本領発揮であり楽しめたが、エビのロードスターには少々きつかったであろう。
 三国峠に着き写真を撮って喜んでいると、前からホンダに乗ったおっさんが現れた。わしらのRSとロードスターを見て、よくこれで来たなとあきれていた。おっさんも1150GS持ってるけどそれでは来ないらしい。どうやらBMWバイクの世界では名の通ったお人のようだ。おっさんからこの先の道に関する貴重な情報が得られた。わしらはここから川上牧丘林道を通って甲府に抜けようとしていたのだが、その道がずっと先で通行止めになってるそうだ。危なかった、知らなかったらかなりの無駄足を喰うところだった。



第三章
 現地の貴重な情報を得た3人のチャレンジャーは、さらにがたぼこ道をヒーヒー言いながら(オレだけ?)西へ西へと向かった。その後南下をはじめ、目指す甲府市の北西約10kmにある韮崎ICあたりをかすめる。それにしても、埼玉から西に向かって甲府を目指しているのに、さんざんな遠回りの末、行き過ぎてしまっているところが愉快でならない。おりこうな人々なら迷わず雁坂トンネルを通るところではあるが、あえて苦難の遠回りスパルタン道を迷わず選ぶところが、さすが俺たち!って感じだね。
 ようやくほったらかし温泉付近にたどりつき、パインウッドオートキャンプ場を目指した。このキャンプ場が営業努力を全くと言っていいほどやっている気配が無く、キャンプ場はこちら、なんていう看板がありゃあしねえ。ホントにこっちでいいのかな?もしかしてやっちまってんじゃねえか?などなどの思いが浮かんでは消えていく、そんな心細い気持ちになった頃、Y字路にパインウッドという、ちょっとかしいでいる丸太の看板を発見。もうこれでだいじゃぶ、と手のひらを返すように強気になってちょっと走ると、少し広い空き地と掘っ立て小屋が。ん?もしかして、ここは産廃不法投棄場所か?なんて雰囲気の所に到着。隊長が確認しに行き、目的地だということが判明。現地には絵に描いたようなオートキャンプ一家が夜景なんぞも見える絶好の場所に陣取っている。我らは、その隣の空き地に陣取るか?とも思ったが、夜遅くまで飲んで騒ぐことになるのは必至であり、20mほど坂をのぼったところにある空き地に陣取る。テントを立て、買い出しを済ませ、薪を運び、用意は調った。
 かんぱ〜い!のご発声を誰が行うともなく飲み、食い、茹で(ソーセージなど)、燃やし(薪)、そしてあたりは暗くなってくる。絶好のロケーションで、たき火もヒートアップしてくる。どこにでもある缶ビール、たいした味ではないポテチやカップラーメン、つまみ、出来合いのギョーザ、それぞれはたいした実力の持ち主ではないのに、ツーリング、野外、炎、そして晴天が、どんな高級レストラン(滅多に行けないけど)より、どんな高級クラブより(行ったことないけど)美味しく、楽しくしてくれる。こんなツーリングが、そしてこんな仲間が大好きだ。他愛のない話と酒と炎、いつも仕事場にいる排泄物的御子息(クソガキ)のことなんぞ、たいしたことねーよーに思えてくる。年に1〜2回くらいしかないこのひとときを楽しむために普段の生活をがんばる、そんなおりこうさんなことを考えるようにもなる。宴も佳境に入り、500ml缶ビールも2本ほど体内に入り、ドカシーに寝っ転がってまどろむようになる。 ラムチはだいぶまどろんでいるようだ。あいつがさっき食ったカップラーメン、汁はそのままで枕元付近に置いてやがる。ま、いいか、と思って缶ビールを口にするぼく。そのとき、ラムチが寝返って、カップラーメンを見事にこぼしやがった。そして浸水したラーメン汁はラムチの頭を直撃。さすがはラムチだ。こういう、相変わらずな姿を見るのも楽しいものだ。その後、次第に酩酊していき、みきおはまだかいのお?と思い始めた頃ぽつぽつと雨が降り始めやがった。全くモウ、魂ツウリングは雨乞いか!と思うほど各地に雨を呼び寄せる俺たち(というか隊長)。横を見ると、ラムチが完全に決まってしまっている。こういう姿は、以前はオレがよくやっていて、たかみちゃんたちにいたずら書きされていたな、なんて思い出す。なんて思っていたそのとき、ミキオから電話が入った。この場所の説明をして、大丈夫か?なんて隊長とたき火をしていると、来たよ来た来た、あのボクサーエンジンの音が。ミキオだといち早く気づいたオレがキャンプ場入口まで出迎えて、ようやく全員集合!ちょっとまて、ラムチが寝てやがる。おこさねば。ミキオがバイクを停めて、荷物を下ろして、 ようやくかんぱあーい!となりました。


第四章へ続く
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