エビとおさるのへっぽこ東北一周の旅

 午前4時。ベットからの「いってらっしゃい」というカミさんの声に送られ、さるは家
を出た。6月13日、梅雨の真っ最中。今にでも降ってきそうな曇り空の中、高速をとば
す。行く先は福島の白河、エビんちだ。それ以上は決まっていない。わかっているのは、
これから三日間走る!、ということだけだ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・

 雨にパラつかれながら白河に到着。エビんちで朝飯。そして作戦会議。どこへ行くのか
と尋ねられたら、「雨の降らないほうへ」と答えるだろう。そしてわしらは、全国的に傘
マークだらけの中、唯一本州で太陽マークのある東北の日本海側に、これからの三日間を
賭けたのである。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 雨の白河を出発。まずは早くこの雨から抜けるために、いっきに東北道を北上し、山形
道にはいり、日本海側に抜けることにする。そして作戦通り月山まで到着したころには天
気も良くなっていた。昼飯を探しながら下道を走り、思わず見つけて立ち寄ってしまった
のが、この日のメインイベントになる。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 朝日村というの道の駅なのだが、何とバンジージャンプができるのだ。 ・・
しかも吊り橋の上から川に向かって飛び降りるのである。以前からバンジーをしたがって
いたエビがこれを見逃すはずがない。橋のたもとでしばし悩んだあげく、 ・・・・・・・

「これで死んでも文句は言いません」

の誓約書にサインするエビがいた。ちなみにさるは、その高さに恐れをなし、腰抜けチャ
レンジャーの名をほしいままにしながら、カメラマンをかって出た。 ・・・・・・・・・














いくぞ〜
どぉりゃ〜
こえ〜
早く助けてくれ〜



 朝日村を後にしたわしらは、日本海側の道をひた走り、北上する。鳥海ブルーラインも
攻めたが、ここはガスっていて景色はあまり楽しめなかった。夕方ごろに秋田市内につき
うろうろしながらショッピングセンターを見つける。そこで夕飯を食い、野宿の友のビー
ルやつまみを買いこんだ。そして海岸にテントを張ることにし、さらに能代市まで走る。

 海岸に着いたころには、日もとっぷり暮れていた。この日の野宿はすばらしかった。
天気はよく、星はまたたき、満月に近い月がこうこうとあたりを照らしていた。
海には漁り火が、陸には風力発電のプロペラが2基、ゆっくり回転している。
なんとも幻想的とでも云おうか。そんな中で酒を飲めるとは、これ以上の贅沢があるだ
ろうか。気持ちよく酔いながら、眠りについたのであった。 ・・・・・・・・・・・・・

キャンプ地の朝の写真
夜は写真とらんかった








 二日目。夜明けとともに目覚め、出発。地図にて「不老ふ死温泉」を発見、そこに向かう。
温泉は海岸にあった。大きな波でもくれば、温泉に入ってるんだか海に入っているんだか
分らなくなりそうな場所だ。こりゃぜひとも入らんばと思い、そこを管理しているホテル
にいき、9時からだと云われ、小1時間ほど待って入った。湯は鉄の赤錆のような色。わ
しら以外に入浴者はなく、海を見ながらの風呂がなかなか良い。夕方なら、海に沈む夕日
を眺めながら入れるそうだ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ぶきみな写真だ〜


 身体もきれいになり、すっかり満足したわしらは、竜飛崎をめざす。ここから先の道が
またすばらしい。峠道が続いたと思えば、次はどこまでもまっすぐ伸びている道。景色も
良く、車がほんとに少ない。そしてすばらしい天気。東北に来て大正解!!!だ。
これが夏休みなら、ツーリングの若者などがそれなりに多くなるんだろうが、今は梅雨。
バイクともほとんどすれ違わない。途中で名物らしいイカを食べたりしながら、どんどん
北上してゆく。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 気持ちよく竜飛崎に到着。階段国道で写真を撮っていると、近くに石碑がたっているの
に気付く。見ると「津軽海峡冬景色」の碑だった。しかも前にボタンがついていて、押す
と歌い始める。なかなかゆかいだ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 そしていよいよ、本州最北端、下北半島の大間崎に進むことにした。よくよく端っこの
好きな二人である。だが陸奥湾をぐるっとまわっていくとかなり時間かかりそうなので、
下北汽船フェリーを使って下北半島にわたる。ここもまたすばらしい。とにかくほとんど
車も無く、山の中を縫うようにして走り進んでいく。よって、このあと落とし穴が待って
いるとは二人とも知るよしもなかった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 エビが(本物の)サルを見つけた、そして指差す。わしはその方向を見る。エビは停ま
ってよく見ようとブレーキをかける。わしそれに気づかず。そして気づいたときはエビの
バイクが目前に迫っていた。急ブレーキも役に立たず、追突!。わしのバイクのフロント
フェンダーがぶっ飛んだ。エビの右パニアがもげて中身をぶちまけた。 ・・・・・・・・




 幸い転倒もなく、ケガもさるの左足打撲くらいですんだ。やっちまったのはショックだ
が、しかたがない。しばし休憩の後、バイクの点検をする。さるの650GSは、ちょっ
と形が変わったぐらいで実走行には影響なし。問題はエビの1100Rだ。わしが後ろか
ら突っ込んだもんだから、テールランプ(とブレーキランプ)が破壊されてつかない。右
のウインカーも切れてる。動力・操作系は問題なかったが、このまま走るには非常に危険
だ。しかしここは下北半島の山の中。立ち止まっているわけには行かない。ほとんど車も
来ない、携帯の電波も届かないこんなところで大怪我したり、バイクが動かなくなるなん
てことがなくてよかったと思うことにして、気を取り直し大間崎へ向かう。 ・・・・・・

本州最北端大間崎


 大間崎を発ち、夕食&寝る場所を求めて南下する。しかしエビのバイク、暗くなってく
ると非常にデンジャラスだ。ウインカーはタマが切れただけだったので交換して直ったが
壊れたテールランプはいかんともしがたい。代わりに懐中電灯をくくりつけてみたが、や
はり暗さは否めない。そうそうにテントを張ることにする。 ・・・・・・・・・/・・・








 三日目。負傷したバイクで走り回るのもよろしくないので、真っ直ぐに帰ることにした。
野宿したのが陸奥湾側の「よこはま」というところだったので、太平洋側へ抜けようと、
地図をたよりに走り始めた。しかし、道はだんだん細くなっていくではありませんか。そ
のうちに舗装もきれて砂利道になってくる。そして上ったり下ったりのまさに山道。さら
「熊出没注意」の看板が、いやがうえにもわしらを盛り上げる。まさかこの旅で林道
ツーリングまでも楽しむことになろうとは思いもしなかった。山の中けっこうな距離を走
り、やっとのことで舗装路まできたわしらは、そのまま南下して、高速をひた走り家路に
ついたのであった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 郡山で別れた後、エビは修理のために郡山のディーラーにバイクを置き、パニア2つと
かばんを持って、B'zのCD買って電車で帰ったそうだ。スパルタンである。わしはという
と、首都高で事故渋滞にはまり、やっとこさ抜け出してへろへろになって家に帰りついた
のであった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ TXT By Osaru
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